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タイで人気のアトラクション「ゾウ乗り体験」をやめた理由

タイで有名な観光といえばゾウ乗り体験

タイ旅行に行くとしたら何をしますか?雑貨ショッピングにおいしいタイ料理、ゴールドに輝くお寺巡り。タイ独特のエキゾチックなイメージは多くの観光客を魅了し続けています。そしてアトラクションの一番人気といえばやっぱりゾウ乗り体験。

こんな写真を目にしたら「ステキ!ゾウと一緒に写真撮りたい」と誰もが思う。ゾウ乗り体験をした人のブログもとても多く、その写真もまた本当にキレイで魅力的。もちろん私も「いいなぁ〜私もゾウに乗って見たいなぁ」と思っていた。

ところがタイに移住した友人からゾウ調教方法の話を聞いて以来、ゾウ乗り体験をするのはやめようという考えに変わりました。なぜそのような考えに変わったのか、そして違う方法でゾウと触れ合う機会があるということを私自身の体験を通じてここに書くことにしました。

人気の裏側に隠された暗い影

タイやカンボジアなどのアジア諸国では、ゾウは観光ビジネスでお金を稼ぐ動物として発展してきました。世界中の旅行会社や広告会社を通じて、その魅力的な写真や非日常的な体験の様子が伝えられ、タイに行ったらゾウ乗り体験というイメージがすっかり定着しました。

私たちはビジネスに隠された嘘に気づかず、ゾウはもともと才能豊かで、穏やかで人懐っこい動物だと信じ込んでいます。でもよく考えて見てください。ゾウが好き好んで本当に絵を描きたいと思っているでしょうか?あるいは喜んで人間を背中に乗せていると信じることができますか?ゾウは巨大な動物ですが、何かを積むために大きな背中があるわけではなく、荷重をかけたら当然苦痛に感じます。そうなんです。人気の裏側には、人間の都合で過酷な調教を強いられているゾウたちがいる事実が隠されています。

ゾウの調教方法とは?悲しい虐待の事実


ゾウの調教は赤ちゃんの時から始まります。赤ちゃんゾウは母親と引き離され、狭い木の檻に閉じ込めて鎖やロープで縛りつけます。そして命令された時だけ動けるようにするのです。「ブルフック」と呼ばれる先の尖った金属の棒や竹の棒で苦痛を与え、衰弱するまで拷問と虐待を続けます。そしてついには赤ちゃんゾウの魂は打ち砕かれ、人間を乗せたり触れられることを受け入れて命令に従うようになります。

そうやってマフート(ゾウ使い)とゾウの主従関係を築いていくのです。これがゾウ調教の最初のプロセスでタイ語で「Phajaan」と言われています。タイのローカルの間では、人間に従順に従わせるためには、このPhajaanという方法を取らなければならないといまだに信じられています。この動画は実際にゾウが拷問されている場面です。この悲しい現実を見たら、私がなぜゾウ乗り体験をするのをやめようと思ったのかすぐに理解できると思います。

ゾウの過酷な調教は心が壊れた後もずっと続きます。敏感な部分である耳にフックを引っ掛けてひっぱたり、ブルフックで痛めつけたりして人間の命令に従わせます。ゾウの皮膚は固く厚いから、ちょっとくらい傷ついても大丈夫だと言う人もいます。でも実際は人間と同じようにとても繊細な皮膚を持っていて、殴ったり刺したりされたら、当然痛くツライ思いをします。時には大怪我を負うこともあります。心も体も大きな傷を負ったゾウの中には一生トラウマを抱えてツラく悲しい人生を送るゾウが多く存在します。

ゾウ本来の姿は、決して一般的にイメージされているような姿ではありません。実際にゾウ乗り体験中に事故が起きているのを知っていますか?ここ最近のケースでは、イギリス人がゾウ乗り体験の際に、踏みつけられ死亡した事故がありました。アユタヤのゾウ園では、ゾウが突然暴れ出しゾウに乗っていた日本人が負傷する事故も起きています。

ゾウが人間を乗せたり、絵を描いて楽しませているのは、決して好き好んでやっているのではないこと。裏で虐待と拷問を何年も受けた姿であるという現実をぜひ知ってほしいと思います。

傷ついたゾウの救いの手「Elephant Nature Park」

傷ついたゾウたちを救い出し、この現状を世界中の人々に伝え続けている勇敢な女性がいます。今回私は、彼女がスタートさせた「Elephant Nature Park」のボランティアツアーに参加し、ゾウと触れ合う貴重な時間を過ごしました。

Elephant Nature Parkとは?

Elephant Nature Parkはチェンマイ市内から車で約1時間半ほどのところにある広大なナショナルパークに位置しています。このタイ人の女性Lek(レック)さんがゾウの救い手となり、1995年にゾウのレスキューを開始しました。彼女はあるゾウに出会った時、幸せに暮らしていると思っていたゾウは怪我を負っており、そして目を見た時に苦痛や怒りを感じ取ったと言います。その瞬間大きなショックを受け、そして自分が助けなければと思ったのが始まりだそうです。

レスキューされたゾウのほとんどは栄養失調で、広範囲にわたる怪我や病気で苦しんでいる状態です。違法木材産業に従事させられて戦争によって残された地雷を踏みつけ大怪我を負ってしまったゾウ、スリングショット(Y字のゴム銃)を受けて目が見えなくなってしまったゾウ、観光ビジネスで過酷な調教で痛めつけられたゾウなど、深刻なトラウマを抱えた状態でElephant Nature Parkに到着します。

レックさんはこう言います。「まず私たちが最初にすることは、たくさんの愛でゾウたちを癒してあげることです。自然の中に戻し、ここが安全であると感じてもらうこと。”信頼”が最初のステップです。」

2007年、サーカスに従事していたゾウFaa Saiをレスキューした時のこと。彼女は両足をつながれ、足にはチェーンによる深い傷を負っており、とても攻撃的な状態で到着しました。たくさんのトラウマを抱え、石を拾っては投げつけてきたため、20メートル以上離れたところでしか彼女の前には立てなかったそうです。彼女もまたPhajaanを受けたのだと想像できます。

Elephant Nature Parkの使命はとてもシンプルです。人間の手から解放し、計り知れない苦痛を和らげていくことです。それはブルフックやチェーンとは無縁の自由に歩ける世界で生きていくことです。私たちのような観光客にも、安全な環境で餌やりや水浴びの手伝いをするボランティアの機会を提供しています。そして欧米を中心とした観光客の間では、ゾウ乗り体験をやめてボランティアに参加する人が徐々に増え続けています。たった一人の女性の「ゾウを助けたい」という想いが、今こうやって世界に広がりつつあり、尊敬を抱かずにはいられません。

ー ボランティアの種類 ー

ボランティアは半日、1日、短期ステイから選択でき、すべて送迎を含めたパッケージになっているので、誰でも気軽に参加できます。今回私が参加したのは、ゾウと一緒にトレッキングをしながら世話をするほぼ1日ボランティアで、10人程度の小グループツアーです。イメージはこちら。

ボランティア体験の1日

それでは私がElephant Nature Parkで実際に体験した1日を紹介します。

ー 朝8時チェンマイ市内の滞在先ホテルでピックアップ ー

タイ人のガイドさんと一緒にボランティアに参加する仲間に挨拶し、チェンマイ市内から約1時間半ほどバンで移動します。気さくでギャグが上手で愉快なタイ人のガイドさんが同行してくれて、車内は朝から笑いのあるいい雰囲気。この日参加したメンバーは、アメリカやヨーロッパから来た方々で、アジア人は私たったひとり…

ー 柵越しにゾウにあいさつ ー

約1時間半の移動をして、メインパークから少し離れた静かなところに到着。バンを降りてちょっと歩くと、いました〜ー!!大きいゾウが4頭。1日お世話するゾウたちに会いました。それとゾウ使いのみなさんも一緒です。まずは柵越しの離れたところから、スイカをあげながらゾウたちと仲良くなる時間を過ごします。柵越しとは言え、こんなに大きな動物と至近距離で接したことがなかったので、最初は本当に緊張しました。この写真を見ても、ビクビクしているのがわかります…

ー お散歩タイム ー

ゾウと少し仲良くなって来たところで、いよいよ約2kmのお散歩タイム。バナナバックにたくさんのバナナを詰めて、ニンジンならぬバナナをぶら下げて歩きます。私たちがお世話するのは「タダオ」。え?!日本の名前?!忠男??答えは「Taa Dao」でした。なるほど!そう書くとタイっぽい名前ですよね。何はともあれ呼びやすくて妙に親近感が湧きました。

それにしても本当に大きいです!!私のこと見えてる?!踏まれてしまいそうでほんと心配になりました。バナナを求めて鼻がビヨーーーーンと伸びて来てクンクンされ、近寄ってくるたびに後ずさり。

「怖がっちゃダメダメ!その場にステイステイ!大丈夫!仲良くしたいだけだから!」とガイドさん。

そうは言われても、あんなに巨大な動物が近づいて来たら普通はビビります。一緒に参加してくれた友人は2回目のボランティアで慣れたもんです。リラックスして簡単にタダオと友達になっていました。

途中、大きい川を渡ったりと、大自然の中を歩きます。私はビーチサンダルでほぼ1日歩いたんですが、もちろん歩きやすいとは言えませんでした。このツアーに参加する時は、歩きやすく濡れたり汚れたりしても大丈夫な格好で行くのをおすすめします。リュックもゾウがクンクンするので、おもいっきり汚れます。間違ってもオシャレはしないように…。

ー 途中でハプニング ー

タダオとのお散歩にも慣れて来た頃、突然ゾウ使いのみなさんが、いきなり叫び始めました。タイ語でよくわからなかったけど、何やら緊迫している様子。

「パオーーーーン!!」と前方から大音量の雄叫びが聞こえ、そして一緒に歩いていたタダオも返事をするように目の前で「パオーーーン!!」。ものすごい勢いで、前方を歩いていたゾウのメドウが一番後ろを歩いていたタダオに向かって大爆走して来ました。タダオと一緒の私たちは、もちろん逃げないと潰されてしまいます。ゾウ使いの皆さんの誘導で、ひたすら猛ダッシュして逃げました。

なぜこんなことが起こったんでしょうか?実はタダオとメドウはいつもくっついて一緒にいる大変仲の良い2頭。先頭グループの歩くテンポが早く、タダオと距離ができてしまったせいで、気づいたメドウが確認のために叫んだようです。ゾウは集団でコミュニケーションをとりながら暮らす社会的な動物です。ここで出会ったゾウたちは自然に助け合いながらグループを形成しています。

すごい音量で鳴いたのは本当にびっくりして心臓がバクバク状態でしたが、野生の動物の世界ではごくごく自然な出来事。動物園では見ることができない光景です。ゾウ使いのみなさんはゾウや自然を良く理解していて、私たちボランティアをしっかりサポートしてくれます。本当に頭が下がります。

ー 大自然の中でランチタイム ー

お散歩の途中、私たちのランチタイムの時間があります。ゾウたちも離れたところでゾウ使いのみなさんとしばし休憩タイムです。正直あまり期待していなかったランチですが、おいしくてびっくりラッキー。それに自然の中でひとつのテーブルでいろいろな国の仲間と食べるランチは格別です。

ー 最後のお世話「水浴び」 ー

ランチの後は山を下り、また川を渡って帰ります。途中また同じようなハプニングが起こり、猛ダッシュで逃げる羽目になりました。友人曰く、前回来た時は一度もこんな経験しなかったそうです。その日出会ったゾウの性格、様々な環境で同じことは起こらない、つまり人間にコントロールされていない証拠です。

さあ、最後のお世話です。カピカピに乾いたゾウの体に水をかけて、スイカをあげました。長時間一緒に過ごしたのでここまでくるとお別れが寂しくなります。今までさんざん虐待を受けて、心も体も傷ついてしまったゾウたち。やっと自由になれた今、ハッピーな生活を送ってほしいと願うばかりです。

ー メインエリア見学 ー

最後はメインエリアにいるゾウたちを見に行きまました。バンに乗って10分ほど移動。そしてボートで川を下って到着です。リバーラフティングはおまけのようですが、結構な揺れで全身びしょ濡れです。着替えを持参した方が良さそうです。

広大なメインエリアを歩きながら、ガイドさんがここで起こる日々のおもしろエピソードや、レスキューされる前のストーリーをたくさん教えてくれました。足が曲がったゾウ、歩けないゾウ、耳がないゾウ、ひとりぼっちのゾウ…。ゾウはグループを形成して集団で生きる動物ですが、ここにいるゾウたちは孤独な人生を歩んできました。

いまここでやっと、本物の家族ではないけどかけがえのない仲間と出会えて日々助け合いながら生活しています。ゾウの世界ではなんとベビーシッター役がちゃんとできるそうです。孤独だったゾウたちから生まれる感動エピソードには心打たれます。ゾウ使いの皆さんや私たちのような多くのボランティアの手助けで、少しずつ傷が癒えて欲しいですね。

参加したボランティアツアー代金6000バーツ(約19000円)
公式WEBサイト(英語) Elephant Nature Park(エレファント ネイチャーパーク)

参加代金が高いと感じるか、安いと感じるかは人それぞれだと思いますが、このお金がゾウたちの食事代やお世話代になる大変有意義な寄付活動だと思っています。

さいごに

ゾウの観光ビジネスの裏に隠されたストーリー聞いたとき、これがビジネスや広告の怖さだと改めて気づかされました。どんなことでも本当のことを知ることは時には残酷な事実を知ることでもあります。でもそこにはいつも「選択肢」があります。何かがおかしいと気づいた時、何を選択しますか?

私自身のことで言えば、実際にElephant Nature Parkを訪ね、学校では学べない多くのことを学び、本当にすばらしい貴重な体験をしました。そして多くの日本人にも知ってもらいたいという想いで、ブログを通じてこの体験を発信する選択をしました。残念ながら日本やアジアから来るボランティアはほんの数パーセントだけで、ほとんどが欧米からのボランティアです。インターネットで検索すると、英語で書かれたブログや記事がびっくりするほど多く、その注目の高さに気づくでしょう。

国やその土地の素晴らしい観光資源や動植物をリスペクトする気持ちを示すことが、今後の観光客に必要なことだと私は感じています。日本でもこのボランティアツアーの意義が少しでも広がったらいいなぁと願っています。

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